回転行列とその逆行列で与えられた行列をはさんで、行列を対角化して引き伸ばしの角度θと倍率α。βを求める方法を説明しました。
また、倍率を固有値、引き伸ばしの方向を示すベクトルを固有ベクトルということを説明しました。
しかし、手計算でもとめる場合は、普通は以下のような手順で求めます。
以下の行列は、回転と拡大を組み合わせて、特定の方向に何倍かの引き伸ばしを行う行列とします。
ただし、今の時点では、方向も倍率もわからないとします。
これにベクトルを作用させると、
となりますが、一般には、

と

は違う向きを向きます。
ただ、たまたま

が固有ベクトルなら、行列は固有ベクトルの方向に引き伸ばしを行うので、

と

は同じ方向を向きます。(引き伸ばしが行われるので、長さは変わる)
そこで、固有ベクトルを

、その固有ベクトルの方向の倍率(即ち固有値)をλ
1とすると
となるはずです。
一般に
と置いて、これを解いてみます。
なので
となります。ここで、もしも
が逆行列
をもつなら、
となり、固有ベクトルが0ベクトルになってしまいます。
これは変なので、逆行列がない条件を考えます。
これは行列式が0になるということなので
です。これを解けば
というように、二つの固有値が求まります。
固有値が求まったら
を解いて、固有ベクトル

、
を解いて、固有ベクトル

を求めます。
前に、30°方向に3倍、120°方向に1倍の引き伸ばしをする行列を
と求めました。これで計算してみましょう。
なので
になり、
というように固有値が求まります。
固有値λ
1=3に対して
となります。固有ベクトルは方向しか示さないので、長さは自由です。
ここでは、長さを1に取り、y>0の方向のものを使うことにすると
となります。同様に、
固有値λ
2=1に対して
となります。固有ベクトルは方向しか示さないので、長さは自由です。
ここでは、長さを1に取り、y>0の方向のものを使うことにすると
となります。
かくして、
という行列が30°方向に3倍、120°方向に1倍の引き伸ばしをする行列であることがわかります。
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