情報社会と著作権(p.69)
著作権
インターネットの普及で、著作権違反がしばしば問題になるようになりました
そこで著作権について簡単に説明します。
著作権と一言で言っても、以下で見るように複雑な分類があります。
「著作権」は知的・精神的活動から生まれた著作物などの創作物に関する権利のことで、「著作権法」で
保護されています。
この法律の目的は、第1 条に述べられている通りで、著作権の本質的意義が謳われて
いいます。
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し、著作者の権利及びこれに隣
接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、
もって文化の発展に寄与することを目的とする。
(著作権法第1 条)
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著作権は著作をした時点で自動的に権利が発生します(どこかに申請して、登録するようなものではない)。
この権利は、公表したかどうかに関係なく発生します。
もう少し詳しく説明すると著作権(copyright) とは「知的財産権の一。著作者がその著作物を排他的・
独占的に利用できる権利。その種類は著作物の複製・上演・演奏・放送・口述・展示・翻訳、映画の上演などを含み、著作者の死後一定期間存続する。」です。
もともとは「著作者に無断で複製させない権利」であり、「複製によって生じた金銭的利益を著作者に還元させる権利」でもあります。
著作権は、「著作者の権利」に関するものと、「著作者以外の人の権利」に関するものとがあります。
著作者の権利は譲渡できない「著作者人格権」と、譲渡できる「著作財産権」とに分かれます。
著作者以外の権利は「著作隣接権」とよばれます。
「著作者」とは著作物を創作した者であり、「著作権者」とは著作権を有する者です。
著作者と著作権者は同一である場合と、異なる場合とがあります。
著作権は下の図のような体系をなしています。
詳しくは教科書を読もう。
パブリシティ権、肖像権
著作権に似たようなものとして、パブリシティ権や肖像権があります。
例えば、街で有名人を見かけて写真を撮った場合、その写真の著作権は撮影者が持っています。
しかし、被写体の有名人には、パブリシティ権や肖像権があります。
実は、「パブリシティ権」と書いた法律の名文はないのですが、パブリシティ権は人格権の一つという扱いです。
すなわち
- 氏名や肖像を無許可で利用したことにより精神的苦痛を受けた場合
- 素材の使い方が評価・名声・印象を損なう場合
に訴えられる可能性があるので注意しましょう。
特にSNSなどで、有名人の顔がはっきり写っている写真、住所などが特定できる写真や、有名人の家族の写真、写真をさらに悪意をもって加工したものなどを公開すると裁判になることもあるので注意しましょう。
ネットの情報の引用
ネットで公開されている情報を利用してレポートなどを書くとき、丸写しするなら、それは引用、丸写しではなく参考にするなら参考文献となります。
レポートに書くときは引用元あるいは参考文献として情報源を書かなくてはいけません。
特に引用するときは、引用しているという事実と引用元を明らかにしないと盗作になってしまうので、必ず引用しているという事実と引用元を書かなければなりません。
ここでは主にネットの文章を引用するときの注意点を述べます。
また、自分で書くのが面倒なので、ネットの記事をコピペしてしまい。「引用です」とすることが多いです。
引用の必然性がなく、「こいつ、手抜きをしたな」と思われるような引用はだめです。
必然性のある引用をしましょう。
問題のある引用の例
自分で書いたところが少ない
当然であるが、自分で書いた部分が主、引用が従でなければなりません。
□□について
AB10111 中部太郎
××というサイト[1]に
「○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○○○○○」
と書いてありました。私もその通りだと思いました。
参考文献
[1]:http://www.nanotoka.chubu.ac.jp
というのは、確かに引用している事実を示し、引用元も明らかにしていますが、引用部分がほとんどであるので、これでは引用が従とは言えません。
これは1つの文章を長く引用している例ですが、複数の文章を多数引用する場合でも同様です。
引用はあくまで自分の意見を補強するために行うのです。引用文に埋もれてしまって、どこに自分の意見や行ったことが書いてあるのかわからないようなレポートはだめです。
引用部分が意味不明
引用部分を適切に切り出すことも重要です。
Aさんが行ったレポートを引用するといます。Aさんの元のレポートが
同じ条件で、冷蔵庫で作った氷(サンプルA)と自然の氷(サンプルB)の融け方を調査した。気温は25℃、湿度50%の条件で実験をしたところ、サンプルBの方が融け方が早いことがわかった。この原因について考察すると...(以下略)
というものであったとします。これを引用して
A氏の研究によると「サンプルBの方が融け方が早いことがわかった。」ということであった[1]。これは今回の私の実験ともよく一致している。
というような書き方をしてたらどうでしょう? これを読んだ人はサンプルBとは何なのか、Aさんのレポートを読まなければわかりません。
たとえば
A氏の研究によると「サンプルBの方が融け方が早いことがわかった。」ということであった[1]。ここでいうサンプルBとは今回の私の実験の二番目の条件のものと同じものである。A氏の結果は今回の私の実験ともよく一致している。
というような書き方なら、読み手にもわかります。
一般に引用個所に"それ"とか"それらの"と言ったような指示代名詞があるとき、特に注意してそれが何を指しているのかわかるように工夫して書きましょう。
基本的にはレポートの読者がいちいち引用元の文をみなくても、そのレポートだけで完結するように書かなくてはいけません。
また、実験レポートなどの場合、ある条件下でのみ正しいことを、条件部分を引用せずに結論だけ引用してしまうと、条件に無関係に一般的に正しいと思われてしまう可能性があります。こういうときは条件部分も引用するか、引用でない場合は自分の言葉でその説明を付ける必要があります。
このように、引用というのは実は結構むずかしいです
自分の言葉で書き直して、引用ではなく参考文献にしたほうがいい場合が多いです。
レポートの読者が引用元をみようと思っても見られない
基本的にはレポートの読者がいちいち引用元の文を見なくても、そのレポートだけで完結するように書かなくてはいけませんが、それでも読者によっては引用元の原文を読んで見たい人もいるでしょう。そういうとき、引用元のサイトがパスワードで保護されていたり、引用元がネット掲示板で、過去の記事が読めないようになっていたりすると、原文が読めません。こういうことがないように、引用元は誰でもいつでも読める記事を引用するようにしましょう。
みんなが知っているようなことを引用している
今回の研究はアメリカについて調査した。
Wikipediaによると、「アメリカ合衆国、通称アメリカ、米国は、北アメリカ大陸および北太平洋に位置する連邦共和国である。」[1]。
この国の特徴は...
参考文献
[1]:「アメリカ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』http://ja.wikipedia.org/wiki/アメリカ。 2012年1月28日20時(日本時間)現在での最新版を取得。
とか、
Wikipediaによると、「円周率は無理数であり、その小数展開は循環しない。小数点以下35桁までの値は次のとおりである。
π = 3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288 … 」[1]
これから、π=3.14として計算すると...
参考文献
[1]:「円周率」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』http://ja.wikipedia.org/wiki/円周率。 2012年1月28日20時(日本時間)現在での最新版を取得。
みたいな引用は馬鹿みたいである。
Wikipediaによろうが、よるまいが、アメリカは北アメリカ大陸および北太平洋に位置する連邦共和国であるし、円周率πの近似値は3.14である。引用は、みんなが当然知っているようなことは引用しません。あまり知られていないことや、いくつかの意見があり特定の人物の意見を取り上げるときなどに引用するのが普通です。
何かわからない問題が発生したとき、いろいろな人がいろいろな仮説を考えます。そのうちのいくつかは、有力な説となり、さらに再検討されます。そして最終的に「これが正しい」とされる一つの説になります。
小、中、高校では、この「これが正しい」というものを学びます。しかし最先端のことを学ぶ大学では、必ずしも一つに落ち着く前の、いくつかの有力な説についても学びます。
ところで、Wikipediaは、基本的には万人が納得する説明を載せます。
いくつかの説があるようなものは、
ノートというところで議論を行い、そこで「まぁ、これでいいだろう」となって初めて公開されます。ところが、ノートは多くの場合、本名ではなく、ネットワーク上の仮名(ハンドル名といいます)で書かれています。
中には、いくつかの説があるのに、一つしか載っていないような場合は
この記事には「独自研究」に基づいた記述がふくまれている恐れがありますというようなコメントが付きます。
このようなシステムであるため。、Wikipediaの載っている記事は、基本的には多くの人が正しいと認めている話です。
そこで、Wikipediaの記事を引用してレポートを書くと、先に挙げたアメリカや円周率のように、なんだかとても馬鹿っぽい印象になってしまいます。
いくつかの説を検討して、自分の見解を加えて書くようなレポートには、Wikipediaは向いていません。
いくつかの説がある場合、「いくつかの説がある」ということはWikipediaに書いてあっても、それが具体的にどういう説なのか、だれが唱えているのかというようなことはあまり書いてありません。
そういうときは、その説を唱えている人自身の本やWebページなどから引用すべきでしょう。
そういうわけで、Wikipediaは中学高校レベルでの調べ学習には使えても、大学レベルでのいくつかの説に自分の考えを加えて書くようなレポートには向いていないと覚えておきましょう。
引用箇所の一般的な書き方
引用しているという事実と引用元を明記せよというのはどんなレポートでも要求されることですが、それを具体的にどのように表記するかは分野や内容によっても違う場合があるので、かならずこのように書けということはありません。
指導教員の意見に従うべきですが、一般的な書き方を紹介します。
引用部分が短い場合
引用個所が短く、1、2行程度であるなら、「 」でくくって引用個所を示します。
引用元を表記は、「」の後ろにつけることもできますがネットからの引用の場合、引用元を示すURLが長いことが多いです。
引用部分よりもURLの方が長いようなものは見た目が悪いです。
...この部分に対する解釈は専門家の間でも意見が分かれている。山田浩は自身のWebサイトで「○と×が共同で△と戦った」(http://www.abc.ne.jp/history/article1.html)と解釈しているが、高橋二郎は「○、×、△が三つ巴で戦った」(http://www.zxy.ne.jp/rekishi/kenkyu/doc11.html)という解釈をしている。
という書き方も間違いではないですが、レポートの最後に参考文献一覧を設けて
...この部分に対する解釈は専門家の間でも意見が分かれている。山田浩は自身のWebサイトで「○は×と共同で△と戦った」[1]と解釈しているが、高橋二郎は「○、×、△が三つ巴で戦った」[2]という解釈をしている。
参考文献:
[1]:「○×戦記の解釈」、http://www.abc.ne,jp/history/article1.html
[2]:「○×戦記の背景」、http://www.zxy.ne.jp/rekishi/kenkyu/doc11.html
というようなほうがいいでしょう。
参考文献と引用元の文献(サイト)は共に参考文献に含めていいです。また参考文献にまとめて入れる場合は、URLだけでなくもう少し情報を入れたほうがよいです。
引用部分が長い場合
引用部分が長く3行以上にわたるような場合は「」でくくるのではなく、引用部分の前後を1行あけ、文頭も2、3文字下げる(インデントを増やす)のがいいでしょう。
たとえば。このような形が一般的です。
...この部分に対する解釈は専門家の間でも意見が分かれている。山田浩は自身のWebサイトで
○は×と共同で△と戦ったと解釈するのが自然であろう。当時の戦力を考えると×と△にくらべて○の戦力はかなり劣ることがわかっている。また食料の生産性も○の位置する気候を考えるとそれほど十分ではなかったであろう。このような状況で三つ巴の戦いが三年以上も続いていたとは考えにくい。[1]
と述べている。確かにそれは一理ある。しかし。仮に×や△が内部に事情を抱えて、この戦争に全力を投入できなかったと考えればどうであろうか...
参考文献:
[1]:「○×戦記の解釈」、http://www.abc.ne,jp/history/article1.html
あるいは引用箇所のフォントを変えるいう方法もあります。
Wikipediaからの引用
Wikipediaの場合、内容が変わってしまうことがあるので、普通参考文献には書かない「いつの時点の情報である」ということも入れておかないといけません。
Wikipediaのトップページ右上のリンクをたどると、Wikipediaからの引用の指針がわかります。
特に、参考文献のところの書き方の例があるので、これに従って書くようにしましょう
Wikipediaの引用の指針
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