インターネットの歴史とWebサービス(p.147)

ネットワークの仕組みを知る必要性

インターネットは最初は理系の分野で使われましたが、現在では文系理系に関係なくあらゆる分野で使われています。
特にビジネスの世界では欠くことのできないツールとなっています。
だから、皆さんも就職したら、インターネットに関係ある部署に配属されるかもしれません。
ビジネスの世界では、Webページを使ったPRやネットショッピングのシステムなどがよく使われます。
そういうものは、以前は自分で作るということもありましたが、最近では専門の業者に発注して作ってもらうのが普通です。
だから、インターネットに関係ある部署に配属されても、細かいことまでは知っている必要はありません。
しかし、専門業者とまったくコミュニケーションがとれないくらい何も知らないのは困ります。
こちらの要求を正しく業者に伝えること
業者の提案を理解すること
それくらいはできるにしておかないといけません。

また最近ではインターネットの関係する事件が新聞やネットのニュースなどに載ることも据えてきました。
大学生としては、そういうニュースを理解できるくらいの知識は必要です。

そのようなわけで、あまり専門的なところには踏み込みませんが、基礎的なインターネットとWebページについて学びます。

インターネットについて

インターネットの始まり

インターネットは、世界中のかなりのコンピュータがつながっているコンピュータネットワークです。
1969年に、米国で軍事目的ARPAネットというものが開発されました。
ARPA(Advanced research Project Agency:高等研究計画局)

これは核戦争を念頭に置いたもので、特徴は、いろいろな機能や通信経路を分散して配置できるということです。
すなわち、もし核兵器でどこかの拠点が一つは解されても、ネットワーク全体が死んでしまうようなことがないように工夫がされていました。
例えば、以下のような形だと

中央の大型コンピュータが破壊されるとアウトです。中央に高性能の大型コンピュータがあって、それに端末がぶら下がるという形はいい設計ではありません。
そこそこの性能のコンピュータが分散されて配置されているほうが安全です。

また、そこそこの性能を持つ中型コンピュータをつなぐ場合でも、以下のように一直線につなぐと、

通信線が一ヶ所でも分断されると、通信が出来なくなってしまいます。
そこで、そこそこの性能を持つ中型コンピュータ(大型も含む)を、一直線でなく、複雑な経路でつなぐことが考えられました。

こういう形だと、通信線が数ヶ所破壊されても、迂回しながら通信が出来ますし、コンピュータが数ヶ所破壊されても、(一部のデータはなくなるかもしれませんが)、システムが全滅するということもありません。

当初は軍事的な目的で開発が進められたネットワークの仕組みでしたが、その後、大学を中心にシステムの改良が続けられできたのがインターネットです。

インターネットの核戦争起源説というのは違うという意見もあるのですが、そうでないにしても というのは、インターネットが災害に非常に強いシステムであるという特徴の一つです。

このようなわけで、本来は、インターネットとは、ネットワークに接続されたPC やサーバーなどの計算機を相互接続する単なる通信技術です。
しかしネットワークを利用したサービスである などを通して、国や大陸を越えた情報や文化の提供と伝達、個人レベルでの商業取引、新興国を中心として政治運動の組織化を可能としています。
つまり、場所を選ばず高速な通信ができる環境を通して、創設期の学術や軍事利用では予想しなかった社会の枠を超えた人間どうしの結びつき、政府が支配できない新たな社会現象を引き起こす力をインターネットが持っていることが明らかとなってきました。

すなわち、インターネットは単なる通信技術を越えて、さまざまな文化的な影響力を持つツールに進化したわけです。

一方で、これまで説明したきたようにセキュリティの問題やネット上のモラルや犯罪行為など、負の側面もあることを忘れないようにしなければなりません。

LAN(ローカルエリアネットワーク)とインターネット

インターネットには世界中の多くのコンピュータが接続され、相互に通信が出来ます。
しかし、1億台以上あると考えられるコンピュータを全て等しいレベルで接続するのはよくありません。

例えば、企業などでは、企業内でのメールのやりとりが非常に多いでしょう。
インターネットで世界中と通信できるとしても、多くの場合は自分の近所で通信が行われているのです。
そこで、まずは一定のエリアを設けて、まずはその中で相手先のコンピュータを探し出し、そのエリアで見つからなかったら、外を探しに行くという方が効率的です。

この小さい地域のネットをLAN(ローカルエリアネットワーク)といいます。
(LANケーブルというときのLANは、実はこれのことです)

そして、世界中のLANがまとまってインターネットを構成しています。

LANにはルータという装置があり、それが、通信先が同じLANの中にあるのか、別のLANにあるのかを仕分けています。

最近は中部大学のルータはめったに壊れませんが、以前は年に一回くらいは止まってしまうことがありました。
そういうときは、中部大学の中にいる人は、中部大のWebページは見られても、外部のYahooやGoogleなどのWebページが見られないというようなことが起きました。

実際は、ルータがかなり複雑に接続されていて、通信経路が破壊されても、いろいろな経路で通信が出来るように設計されています。

どこかのコンピュータの通信をするときは必ずしも最短経路を通るとは限りません。いろいろなルータを経由しながら通信が行われるのが普通です。

プロトコル

コンピュータ通信といっても、基本的には普通の手紙の配達とそれほど違いはありません。
でも、手紙の配達にもルールがあります。日本の場合は右から
  1. 受信者の住所
  2. 受信者の名前
  3. 送信者の住所
  4. 送信者の名前
という順番で書くのが普通です。もしも
  1. 送信者の住所
  2. 送信者の名前
  3. 受信者の住所
  4. 受信者の名前
という順番で書いたら、はがき送信者に戻ってきてしまいます。

人間が扱う場合は多少間違っていてもなんとかしてもらえますが、コンピュータが扱うときは、こういうところの書き方の順番が違っていると、正しく届きません。
こういう通信のための約束事を プロトコル といいます。
(プロトコルという単語は通信に限らず一般的な約束事の意味ですが、コンピュータの世界では通信のための約束事を指す場合が多いです。)

さて、1970年代には、コンピュータメーカー主導のコンピュータネットワークの開発も進められていました。
例えばIBM社のSNA、ノベル社のNetWareなどです。しかし、これらは基本的には同じメーカーのコンピュータ同士しか接続できませんでした。各社が独自のプロトコルを提案していたためです。
これではまずいということで、コンピュータ通信のための統一規格を作り、それに従って作られたコンピュータならば相互に接続できるようにしようという考えが出てきました。

そうして出来たのがTCP/IP(ティーシーピー アイピー)です。
これはTCP(Transmission Control Protocol)とIP(Internet Protocol)という二つのプロトコルをあわせたものです。

この方式では、通信データが大きいときは、いくつかの小単位(パケット)に分割されて送られます。
通信の場合、どうしてもある確率で通信エラーというものが起きます。
大きいデータを送信する場合、最後で通信エラーが起きたら最初からやりなおしというのは、効率が悪いです。
そこで、大きいデータは小さいデータ(パケット)に分割して送ります。
そうすると、「20分割の19番目が失敗しているので、19番目だけを送りなおしてくれ」というようなことができるわけです。

そのようなわけで通信は、冒頭に発信者情報、受信者情報、何らかのエラーが起きた場合の処置や、バージョン情報、パケットの復元のための情報などが決められた順番にそって書かれており(このような情報が書かれているところをヘッダーといいます)、その後、通信内容が書かれます

TCP/IPというプロトコルを使うことで、いろいろなメーカーのパソコン同士が通信できます。

あるコンピュータがTCP/IPプロトコルを使うためには、IPアドレスというアドレスを持つ必要があります。
これは携帯電話の電話番号のようなものです。
コンピュータが通信を行う場合、IPアドレスを使って通信相手のコンピュータを探します。
IPアドレスは、例えば157.110.35.101というような数字で表現されますが、これは覚えにくいです。
そこで普通はwww.chubu.ac.jpのように、もう少し覚えやすい名前を使います。この表現をドメイン名といいます。
DNSというサーバがIPアドレスとドメイン名の関係を教えてくれて、ドメイン名でも相手のコンピュータを探せるようになっています。

当然だが、IPアドレスやドメイン名は重複が許されないため、ユーザーが勝手に決められるものではなありません。
アドレスを管理する機関に申請して取得する登録制です。
この役割を行う非営利の国際組織がICANN (The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers) であり、日本には下部組織としてJPNIC があります。
(ただし、普通は個人がここと交渉するのではなく、例えば、中部大学の場合は総合情報センターがまとめていくつかのアドレスを取得しており、中部大関係者が総合情報センターからアドレスをもらうことになっています。)

ドメイン名にはいくつかルールがあります。
例えば
国名、地域名フランス英国中国台湾日本韓国インドカナダEU
表記frukcntwjpkrincaeu
組織政府機関教育研究機関非営利団体ネット関係企業
表記(米国)goveduorgnetcom
表記(日本)go.jpac.jpor.jpne.jpco.jp
というようなものがあります。
インターネット発祥の米国には実は(.us)というのがあるのですが、あまり使われません。
ドメイン名の付け方のルールは比較的ゆるく、日本の企業でも最後が.comのものがあります(例えば、朝日新聞、www.asahi.com)。
また、.tvはツバルを表す国別ドメインですが、ツバルとは関係ないテレビ会社が、〇〇.tvというドメインを取得している例もあります(例えば、abema.tv)。

こういう例もあるので、ドメイン名を全面的に信じるのは危ないですが、ある程度は信用できる情報です。
ネットの情報を利用する場合、その情報をどこが出しているのかを知ることができるので、その情報が信用できるかどうかの目安になります。

インターネットで出来ること

インターネットによる通信を使うといろいろなことが出来ます。
名前 内容 ポート番号
telnet 遠くにあるコンピュータを遠隔操作する 23
ftp 他のコンピュータとファイルのやり取りをする 21
ssh telnet、ftpに代わって使われる 22
smtp メールを出す 25
pop メールを受ける 109,110
http WWWを使う 80
など。他にもいろいろあります。


最初に初期のころは中央大型コンピュータに能力が低いコンピュータがつながっていたと説明しました。
この頃は、性能の低いコンピュータを使って離れたところにある大型コンピュータを遠隔操作して大型コンピュータに計算をしてもらっていたわけです。
そういう、自分のコンピュータで、離れたところにある別のコンピュータを遠隔操作するときに使うのがtelnet(テルネット)です。



また、核戦争でコンピュータが破壊されても、お互いにデータのコピーをしておけばデータは生き残るという話をしました。
コンピュータ間でファイルの転送をするときにつかいのがftp(エフティーピー)です。



telnetやftpはインターネットの初期から使われた機能ですが、その分、古いです。
セキュリティ上の問題などもあり、最近ではssh(セキュアシェル)というものが使われています。)

皆さんは、メールやWebくらいしか使わないかもしれませんが、実はインターネットではいろいろなことができます。
そして、そういう機能ごとにポート番号というものが割り当てられています。

ファイヤウォール機能のあるルータは、これらをポート番号ごとにコントロールできます。
実際はもちろん下図のような壁ではなく電気回路です。
また通信回線は一本でも、内部的には通信が通過する場所が異なっていて、ネットワーク管理者はポート番号を開けたり閉じたりして、データを通したり、通さなかったり出来ます。


そのため、インターネットにつながっていればなんでもできるというわけではありません。
メールやWebは普通に出来るのに、ネットワークゲームが出来ないというような場合もあります。


クライアントとサーバ